この日は、開発を進めていたMVPの予定を変更し、セキュリティやデータ設計を見直すことを優先した。
一見すると遠回りに思える作業だが、この判断は間違っていなかったと思う。
MVPを作るときは、どうしても「何ができるか」という機能に意識が向きやすい。
しかし、機能は後から追加できても、最初に残さなかったデータは後から取り戻せない。
だから今回は、初期機能はできるだけシンプルにする一方で、管理用のデータは将来を見据えた形で保存する設計にした。
担当者、種類、相手先、案件内容、温度感、次回対応、懸念点、ステータス、受信日時、メッセージID、元の本文。
今は画面に表示しなくても、将来分析や検索、AIによる提案に使える可能性がある情報は最初から保持する。
「機能は小さく、データは育つ形にする。」
この考え方は、今回の開発で改めて強く意識したことだった。
同じ日、以前から相談していた方へサービスの話をしたところ、
「まさしくこういうものが欲しかった」
という返事をいただいた。
もちろん、これだけで成功が決まるわけではない
しかし、自分が考えてきた方向性が現場の困りごとと重なっていたことは、大きな励みになった。
午後には別の相談もいただいた。
外国人スタッフ向けの教育マニュアルや、現場で使えるAIの活用についてである。
試作としてマニュアル形式のチャットボットを組み立ててみると、業種が違っても土台になる考え方は共通していることに気付いた。
知識を整理し、プロンプトを磨き込み、必要な情報を適切に持たせれば、製造業でも建設業でも、さまざまな現場へ応用できる可能性がある。
AIそのものが価値なのではなく、現場で使える形に整理された知識が価値になる。
そんな手応えを感じた時間だった。
この日、APIについても本格的に運用していく覚悟を決めた。
費用はかかる。しかし、それを惜しんでいては実際の利用環境でしか分からない課題や改善点は見えてこない。
まずは自分で使い込み、試し、改善を繰り返す。
その積み重ねが、結果としてお客様に提案できるサービスの品質につながると考えている。
派手な機能を次々と追加することよりも、小さく作り、現場で試し、必要なものだけを育てていく。
そして、その裏側では将来につながるデータを静かに積み重ねていく。
最近の開発では、この考え方が以前にも増して重要になってきた。
AIの時代だからこそ、完成形を最初から目指すのではなく、成長できる土台を作ること。
これからも、その姿勢を大切に開発を続けていきたい。

