AIを使った開発を続けていると、「作る」という作業そのものは本当に速くなったと感じる。
この日は配車システムの画面を触っていた。スケジュールを下までスクロールしたあと、次の月を見るために、また一番上まで戻らなければならない。これは面倒なので、画面下にも移動用の矢印を追加した。
こういう修正はAIに頼めば短時間で終わる。
ところが、その短い作業を始めるまでの準備に、意外と時間がかかる。
Chromeを立ち上げ、個人と会社のアカウントを開き、GitHubとChatGPTを表示し、作業するフォルダを開く。
一つ一つは大したことではない。しかし、毎回「さて、何から開こうか」と考えていると小さな摩擦になる。
そこで、パソコンを起動したらここまでを一連の流れとしてやってしまおうと考えた。
AIで実作業が短くなるほど、その前後にある準備の時間が相対的に目立つようになる。ならば準備もルーティンにしてしまえばいい。
この日はダッシュボードにも手を入れ、担当者の割合などをグラフと数字で見えるようにした。さらに、備考を付箋のように並べて見る「スティッキーボード」も試作した。
ただ、作ったものを見せた時の反応には差があった。
完成形のイメージが見えている人には伝わりやすい。一方で、機能を断片的に見ている人には全体像が分かりにくい。
そして別のやり取りでは、もっと根本的なことにも気づいた。
スプレッドシートの触り方が分からない。ファイルのダウンロード方法が分からない。ダウンロードしたファイルをどこへ移動すればいいか分からない。
こちらはつい「仕組みをどう作るか」を考えてしまうが、使う人にとっての入口は、もっと手前にある場合がある。
技術的に便利なものを作れば使ってもらえる、というわけではない。
夕方には、ある介護施設で理事長と施設長に音声入力の仕組みをプレゼンした。実際のシステムを紹介し、ライブでの動作も見てもらった。そのうえで、現場で使っている紙の帳票を見ながら、どの情報をどう流していくのかを話した。
そこで理事長から、開発契約書を作ってほしいと言っていただいた。
これまで小さく試しながら作ってきたMVPという考え方で、本格的に腰を据えて取り組める案件になりそうだ。
AIによってコードを書く時間は確実に短くなっている。
だからこそ、何を作るのか。どう準備するのか。誰が使うのか。その人には何が見えていて、何が見えていないのか。
仕事の重心が、少しずつそこへ移ってきているように思う。

