S/N比とは Signal / Noise Ratio(信号対雑音比) の略である。
簡単に言えば、
Signal(信号) は本当に聴きたい音、意味のある情報。
Noise(雑音) は邪魔な音、歪み、余計な情報。
この二つの比率が、S/N比だ。
ラジオにおけるS/N比
S/N比が高いと、音は澄む。
声の輪郭が立ち、息遣いまで分かる。
音量を上げなくても、自然に耳に入ってくる。
逆に、S/N比が低いと音は濁る。
ザーッという雑音に埋もれて、
何を言っているのか分からない。
思わず音量を上げるが、うるさくなるだけで、理解は進まない。
FMラジオで、チューニングが合った瞬間。
あの「空気が変わる」感覚。
実はそのとき、S/N比が一気に上がっている。
「貧すれば鈍する」の正体
この構造は、思考や対話にも、そのまま当てはまる。
思考における Signal(信号) とは、
- 相手の本音
- 状況の本質
- 自分が本当に感じていること
一方、Noise(雑音) とは、
- 焦り
- 不安
- 防衛
- 義務感
- 評価されたい気持ち
- 外からの圧
こうしたものだ。
人は「貧しく」なると、このNoiseが増える。
金銭的な話に限らない。
時間が足りないとき、余裕がないとき、
自分を守らなければならないと感じたとき。
頭は動いているのに、
どこか噛み合わない。
考えているのに、決められない。
それは能力の問題ではない。
S/N比が下がっているだけ だ。
S/N比が下がったときに起きること
S/N比が下がると、
- 相手の一言が、なぜか刺さる
- 本題とは関係ないところに引っかかる
- 言わなくていい一言を足してしまう
- 正しさで押し切りたくなる
あとから振り返ると、
「そこまで言う必要あったかな」
と思うことが増える。
情報が足りなかったわけでも、
論理が破綻していたわけでもない。
雑音が多すぎただけ なのだ。
S/N比が高い状態とは
S/N比が高いとは、
情報量が多いことでも、
正しさが増えることでもない。
濁りが減っている状態 である。
S/N比が高いと、
- 同じ言葉でも、やわらかく届く
- 沈黙が怖くなくなる
- 言わなくていいことが、自然に分かる
判断は速くなるが、荒れない。
決断しても、あとで後悔しにくい。
まとめ
「貧すれば鈍する」とは、
経済的に苦しいと、人はダメになる、
という話ではない。
困窮によって生まれる 雑音(Noise) が、
本質である 信号(Signal) を聴こえなくさせる。
それが、人を鈍らせる。
FMラジオの音が澄む、あの感覚。
あれは、何かを足した結果ではない。
余計なものが消えただけ だ。
だから私は、
判断が鈍ったと感じたとき、
答えを探す前に、
「今、どんな雑音を抱えているか」
を一度見直すようにしている。
チューニングが合えば、
世界は、驚くほど静かに、
そしてはっきりと見えてくる。

