仕事を受けるとき、これまで主に見てきたのは仕事内容と金額だった。
何をやるのか。 報酬は妥当か。 時間や負荷は現実的か。
これは間違った基準ではない。
ただ、今回の仕事を通じて、それだけでは判断できない要素があることに気づいた。
それは、仕事を続ける中で、自分の立ち位置がどう変わっていくかという点だった。
仕事は同じでも、立ち位置は変わる
関わり始めた当初、私は外部の立場だった。
整理役であり、相談役であり、全体を見ながら判断する役割。
ところが時間が経つにつれ、少しずつ関わり方が変わっていった。
現場が忙しくなり、人手が足りず、その場の対応が優先される。
誰かに命じられたわけではない。 契約が変わったわけでもない。
ただ流れの中で、判断や設計よりも、「今ここを回すこと」が主になっていった。
例えば、当初は月1回の戦略会議で全体を見る立場だったのが、気づけば週3回の現場タスク対応になっていた。
仕事内容や金額は変わっていない。
けれど、自分の立ち位置だけが静かに下がっていた。
後から分かるサイン
その変化に、最初は気づかなかった。
後になって日記のメモを見返したとき、違和感を覚えた。
以前は、その日の出来事や感想が自然と書けていたのに、その期間の日記は単語が並んでいるだけだった。
忙しかったから、とも言える。 時間がなかったから、とも言える。
ただ今振り返ると、自分の視点で物事を咀嚼する余白が、かなり削られていたという感覚の方が近い。
FAF(Feel After Filter)という判断の仕方
ここで使ったのが、自分の中で整理してきた FAF(Feel After Filter) という考え方だった。
FAFは「感情で決めるな」「論理で決めろ」という話ではない。
順番の話だ。
まず、条件や構造をフィルターにかける。
- 仕事内容
- 金額
- 時間
- 再現性
- 立ち位置の変化
その上で、最後に感情で決める。
感情を排除するのではなく、感情を”最後の判断者”として使う。
多くの人が「感情 vs 論理」という二項対立で考えるが、私は違う。論理で構造を見て、感情で最終決定する。この順番が大事だと考えている。
今回の場合、フィルターにかけた結果、この仕事は**構造的に「立ち位置が下がり続ける設計」**だと分かった。
その上で、「この状態を続けたいか」と自分に問うた。
答えは、はっきりしていた。
やめると決めた理由
だから、やめると決めた。
不満が爆発したわけではない。 感情的に限界だったわけでもない。
構造を見て、その先の自分の姿が想像できたからだ。
このまま続ければ、
- 判断より対応が増える
- 主語が自分から現場に移る
- 書くこと、考えることが後回しになる
そういう未来が、かなり高い確率で見えた。
それは「今の自分がやるべき仕事」ではないと判断した。
次からの判断基準
今回の経験で、今後は仕事内容と金額だけでは判断しないと決めた。
受ける前に、これを一度考える。
この仕事を続けたとき、数か月後、自分はどの立ち位置で関わっているだろうか。
同じ位置か。 俯瞰した位置か。 それとも、現場に埋没しているか。
もし後者のイメージが強ければ、条件を見直すか、受けない。
それは冷たい判断ではなく、自分の役割と重心を守るための判断だと思っている。
失敗ではなく、学習として
正直に言えば、これまでこの視点で受注を考えたことはなかった。
今回の仕事で、初めてはっきり意識することになった。
だからこれは失敗ではなく、次の意思決定の精度を上げるための学習だった。
この基準は、これからも静かに使っていくつもりだ。

